「さあ、準備はよいか。行くぞ、結迦」

「はい」

一瞬、結迦は眩暈のような感覚に陥りながら、その光の環へと突入した。決して離れることのないよう、手をつないだふたりは、環の中の空間に身を委ねた。ほんの数秒の後、一面緑の美しい景色の中に降り立っていた。

ガラスでできた大きなドームの空間の中に、ふたりはいた。

「ここは、いったいどこなのでしょう?」

「ふむ。おそらく……地下都市ではないのか」

「え ? 地球の地底世界ってことですか? 景色はすばらしいですが、人の姿が見えませんね」

「そのようだな」

周りを見渡してみると、スタンド式の大きな画面があることに気づく。

結迦がその画面に近づくと、「Welcome」とだけ映し出された。

「これは、なんでしょうね」

結迦がそうつぶやくと、

「コレハ ナンデショウネ。ニホンゴデ OKデスカ?」なんと、画面から声がしたのである。

 

👉『今は令和と申すのか』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】一通のショートメール…45年前の初恋の人からだった。彼は私にとって初めての「男」で、そして、37年前に私を捨てた人だ

【注目記事】あの臭いは人間の腐った臭いで、自分は何日も死体の隣に寝ていた。隣家の換気口から異臭がし、管理会社に連絡すると...