「加納君って優しいんだ」
まるで、僕がいつもは怖いイメージでもあるような言い方だった。
「いつも、そんなに怖い?」
また彼女は笑った。
「ごめん。そういう意味じゃなくて……あんまり話したことないし……隣の席なのに……ね」
「ま……ね」
何となく、タドタドしい会話だったが無理もない。こうやって話すのは初めて。しかもふたりきり。急な彼女の誘いだったので、自分からの話題など考えてもいなかった。
“プシュッ”と渡した缶の紅茶を開け、一口飲むと「美味しい」と嬉しそうに微笑んだ彼女。その薄いピンク色をした唇に思わず目がいってしまった僕は、慌てて目を逸らしていた。
「加納君ってモテるでしょ」
ゲホッ! 思わず、むせてしまった。
「大丈夫?」と言いながら、背中をさすってくれていた。
「何、いきなり」
まだ少しむせながら聞いた。
「かっこいいから」
即答か?
「どこがだよ」
思わず男子と話しているような口調になっていた。
「背だって高いし、俳優さんみたいな顔つきだし」
「……それ、言いに誘ったの?」
少し淋し気な表情や、昼休みの赤い目をした彼女が気になっていたので、拍子抜けした感じがしていた。確かに、「モテる」とか「かっこいい」と言われて、気など悪くするはずもない。それでも、何となく意外な彼女の一面を見てしまった気がした。
「……ごめん……そうじゃないんだけど……」
「じゃ、何」
そのような心情だった自分の言葉は少しキツかったかもしれない。
「ん……あの……」