【前回の記事を読む】「今日、一緒に帰れる?」同級生達に冷やかされながら、僕は彼女と一緒に帰った

第一章 コスモスの頃

三.真実

靴に履き替え、校舎を出た。

校門までは、ふたり、少し距離をおいて歩いていた。暗黙の了解とでもいうのか……そんなところだ。

校門を出ると、彼女が話し掛けてきた。

「この辺に、ゆっくり話できるところない?」

「ゆっくり?」

「うん……ちょっと話したいことがあって……」

うつむき加減にそう言った彼女は、少し淋し気に映った。

「だったら……公園とかあるけど。外じゃ寒いかな」

「ううん。じゃ、そこで」

学校から歩いて十分程度のところに、ちょっとした“憩いの場”的な公園がある。春ともなれば桜が満開になる公園だった。しかし、その時期は葉もつけない桜の木が並んでいるだけ。とはいえそこには池や有名な作家が創ったオブジェなどがあり、その町のシンボル的な公園にもなっていた。

秋の風が少し冷たくも感じたが、もともと雪国育ちの自分にとっては、それほどの寒さでもなかった。彼女はというと……少し寒そうにはしていたものの、何となく優しい言葉をかけるキッカケを失っていた自分がいた。

公園の入り口近くにベンチがあったので、そこに座って話をすることにした。

「素敵な公園があったんだね」

「一応、ここらへんの唯一の名物?」

そう言った僕の言葉に、彼女は少しだけ笑っていたようだった。

「ごめんね、付き合わせちゃって」

「いいよ、別に」

「まだ……怒ってる?」

たぶん、昼休みに勘違いされたままだと直感した。

「最初から怒ってなんかいないけど」

「そう……?」

何となく、納得されていない雰囲気。自分の言葉遣いがブッキラボウなのかと思ったが、もはや遅い。そのまま黙ってしまった彼女に「ちょっと待ってて」と言い、自動販売機で温かい紅茶を買って渡した。それを受け取った彼女は、昼休み以降、初めて僕に向かって笑顔を見せてくれた。