筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護

「地味、地味、地味!」の のどかな山中病院

(五)がんばりのリハビリチーム

在宅でのリハビリの先生方も、筋力低下の食い止め、尖足(足の関節が、つま先が伸びた状態で固まり、立ち上がったり歩いたりする際に、踵がつかない)防止の筋力維持その他呼吸器装着のALS患者に対してのリハビリをそれぞれ計画を立て、長いスパンで治療を考えておられましたので、それが継続されることに安心をいたしました。

筋力は、加速的に降下の一途を辿るALS患者にとって「今さらリハビリなんて」と思われる方もおられることでしょうが、人間として生きている限り『生へのあくなき努力は続けるべきである』というのが私たち家族の持論です。

もっと言わせていただければ、リハビリ計画だのリハビリの基本云々を述べている時間はもう今の夫にはないのです。一日に半歩でも一歩でも筋力の退化を遅らせる方法はないものかと私たち家族は必死なのです。

旅立ちのその瞬間まで、身体の各器官の退化防止の努力をすることが私たち家族の役割であり、天から与えられた命の尊厳に対する礼儀というものであろうと私たち家族は思っております。

言語療法士の先生が、今まで指差し文字盤を使っていたのが、このごろは指が震えてしまい、自分の意のままに文字が拾えなくなってきている夫を見て、目示で文字を追える文字盤をお持ちくださいました。

それは、透明な文字盤に五十音が書き込んであり、それを目の動きに沿って介助者が読み取るものでした。