筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護
『おかげさまで』 あとがきに代えて
我が家では、四人家族ではあっても、それぞれがそれぞれの立場で仕事に忙しく、静かに、じっくりと語り合うこともままならないこともありました。
しかし、昭四郎の病を得てからは、病院では、大勢の看護師、介護職のみなさま方、家では『チーム昭四郎』の方々に囲まれ、温かい励まし、お世話をいただきながら、楽しい?闘病生活を送ることが出来たと思います。
ベッドの上から大きな目を見開いて、ニンマリ、にっこりしている夫の顔が浮かびます。今は、病の拘束の苦しみから解放されて、羽を伸ばしていることと思います。
私達家族は、みなさまからお教えいただきました介護技術、療養方法等々を、これから闘病をされんとしておられる方々に引き継ぎ、お伝えすることがみなさまへのご恩返しだと思っております。
患者本人はもとより、ご家族の方々も長い闘病生活に決して息切れのすることのないように、私たちをお使いいただけたらと思っております。
おかげさまでここまで参りました。いろいろと本当にありがとうございました。
ALSなんて怖くない
「奥さん、わしは生きたいんじゃ」
鬼気迫る真剣さで、私の手をぎっちりと握って、私の目を真正面に見つめて訴える男性。私は心が痛くなった。とっさのことに返す言葉も見つからず、その手をぐっと握りしめ、辛うじてうなずくことしかできなかった。
夫を送り出した私たち家族は、何も判らず降って湧いたような『ALS』という病気に向かって、ただただ無我夢中で、付き合ってきたここ数年でした。