しかし振り返ってみますと、医師、看護師、介護関係みなさま方の大きなお力に恵まれ、本人の希望通り自分の家で、家族や猫二匹と共に、いつもの所で、最期までいつものように過ごすことが出来ました。
患者という概念を忘れ、KGB的視野?に立って、忙しく立ち働くみなさま方をじっくりとみつめている夫の顔は、病気自体の苦しみもさしてなく、のんびりとベッドの上からの世界を楽しんでいるようにさえ見受けられました。
その姿はとてものびやかでした。私たち家族も、難病への不安は覚えつつも、ただ夢中で介護スタッフみなさま方の中にどっぷりと身を委ね、教えられるままに、身を処して参りました。
私たち家族は、これからは、こうしてお世話になった方々に、少しでもそのお返しが出来たらとALS協会の家族会に入会いたしました。
この項の冒頭の男性の言葉は、ALS患者ご家族さんからの介護についての相談依頼がありお伺いした折、そのお宅の患者さんからの心からの訴えでした。
現実には、各御家庭それぞれにいろいろの事情があり、患者さんご本人の要望を一〇〇%叶えることはむずかしいことがあろうとは思われます。
しかし、その意を汲み、半歩でも一歩でもその希望に応えられるように、みなさんで努力していただきたいと思います。
幸いにしてわが日本は、世界に冠たる長寿国に突入しております。また福祉制度の充実もこのところ大きく前進しております。
ALSに限らず諸々の難病など『禍言(まがごと)』と捉えず、きちんと家族の絆として闘病に前進して行かれることを願って止みません。
【前回の記事を読む】穏やかな顔で亡くなった夫を見送りながら、在宅介護を振り返る。私たちを支えた医療・介護のプロの方たちへの感謝
本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。