私は8月いっぱいで会社を辞めて、

9月から北海道に旅に出ようと考えていると打ち明けた。

先ずは宗谷岬を目指し、そこから南下して、最終的には波照間島に行きたい。

さすがにブラジルは、身体のこともあるし難しいから国内で旅してくるわ、

と一通り話した後、彼女は前のめりで目を輝かせて言ってきた。

「波照間島、行ってみたい」

「石垣島に行ったことないから、私も行きたい!」

「9月中旬ちょうど空いてるし、飛行機のマイルも使わなきゃだから」

「ケンボーが行くなら私も行く!」

私は一人旅で行く気満々だったが、旅は道連れだと方向転換し、

先ずは南から攻めることにした。

まぁ、同世代の女子と二人で旅行に行くという下心はなかったかと言えば嘘になるが、

アユとの関係がギクシャクしてきたという事実もあったためか、アユにはそのことを言うタイミングもなかった。

それと、言葉通り現実逃避したかった。

「邪魔だから、生きるな」

この言葉が時たま脳裏を駆け巡る。

少しでも非日常的で刺激的な日々を欲していた。

かくして、ヒデジの店のバイト女性と石垣島旅行に行くことになった私は、

その日から旅行計画を立てるために、

『石垣島完全ガイド』『八重山マスター』『訳あって沖縄』

なんて本を片っ端から購入し、毎日あんなことこんなことを妄想する日々が続くことになった。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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