「電話頂いたフクイさんですね~。お掛けになってお待ちくださ~い」
電話のままであった。アユはすかさず「あの子、江古田ちゃんに出てくる猛禽類だな」とポツリと呟いていた。
そんなのっけからユル度数MAXの病院。担当医である病院の屋号が名前の先生が現れた。
私はメモ帳を渡し、担当医は目を通す。
「ふむふむ、そうでしたかぁ」
「遠くからご苦労様です」
「今一番困っていることはありますか?」
「進行は非常に遅いようですね」
優しそうな表情。
優しそうな声。
優しそうな雰囲気。
そして自ら多くは語らず、あくまでも当事者の考えを尊重するスタンスに、私は安堵感を得た。
この病院なら上手く病気と向き合える。この病院なら全て納得出来る。
バケツリレーのような次の患者次の患者スタイルではない。
受付、看護師、リハビリスタッフの仲睦まじい病院の雰囲気に私は安堵感を得た。近所の大学病院では一言も出てこなかったリハビリという言葉も提案してくれた。
翌週から月に2回ほど、この市川にある病院にお世話になることになった。
もう一度ALSと向き合えるチャンスが訪れたのだ。
次回更新は7月24日(木)、20時の予定です。