フランスと縁を切るというのはフランスに敵対するという意味ではない。

ローマ帝国、サラセン帝国、オスマン帝国に支配され、更にその後百三十年もの間フランスの統治下にあったアルジェリア。

そのアルジェリアが独立国という名の通り、真に独り立ちするためには、いつまでもフランスにおんぶに抱っこでは駄目だという覚悟の表れが、この大統領方針である。

映画が終わるとあとは寝るしかない。二人ともそれぞれの部屋に戻った。

たった二、三日ではあるが、この世間から隔離された孤島のような場所から明日は抜け出れると思うと、やっぱり心がうきうきとする。

加藤はなかなか眠れず、眠れないままに部屋を抜け出して外に出た。すると井原も同様らしく、外へ出てきた。

二人で砂の上に大の字になって空を見上げる。加藤が、

「満天の星とはこんこつばい。すぐ近くに見えるけん手を伸ばせばつかめるようだ」と言いながら手を伸ばしグーパーをした。空振りだった。

井原がそれを見て、

「おい、それは無理ばい。釣り竿ぐらいの棒を持ってくると落せるかも知れん」とまじめな顔で言った。二人で大笑いだ。

眠れないままに朝を迎えた。

朝食を済ませ、出発の準備が整った頃に迎えの車が来た。

陽はまた昇る、と言うが本当だ。東側の地平線が赤く染まり、孤高の太陽が顔を出してきた。

「もう地球の向こう側を回って来たとか」と井原が言う。

次回更新は7月5日(土)、21時の予定です。

 

👉『カスバの女』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】ラインで噓をつく妻。「何かおかしい…」謎と疑問が疑惑に変わり妻の車にGPSを付けてみると…

【注目記事】失踪する3ヶ月前の交際2年目の記念日「9月29日」にプロポーズ。その翌日に婚約者が失踪…?