【前回記事を読む】「なにかあるの?」「大丈夫、なんでもないよ」――本当に? どうしようもない胸騒ぎが、胸の中をどんどんと埋めていく
第一章 ロボットと少女
なんでもないよ
一つ目の話は、人類が栄えていたころの話。二つ目は、食料の取り方。銃を使って狩猟をしたり、農耕をすると食物が取れる。三つ目は、病気の話。肺炎や、がん。インフルエンザウイルスについての対処法。
四つ目は、『リベドルト』という組織の話。
「リベドルト?」
「生き残りの人類で結成された科学組織だよ。そうだな、作ろうと思えば『空飛ぶ車』ぐらい作れるんじゃないかな?」
「なにそれ?」
「空を飛ぶ車だよ」
「……そっか?」
空を飛ぶ車だよ、と言われても説明が足りないし、わかりにくいと感じたけれど、わざわざ追及するのも面倒くさいので黙っておいた。
そのリベドルトという組織は火山噴火によってできた、『ウィングフィールド』という島に拠点を置いているらしく、謎に包まれた組織だと言っていた。
「なんか、かっこいいね!」
「そう?」
「うん! なんか、こう、〝謎〟って感じがいい!」
ナギサは「ふーん」と返した。もうあたりは星空に包まれて、誰かが光量つまみを間違えてぐいっと押し上げたように、ぎらぎらと光っていた。まるで、この日のために用意された舞台のように、不自然なくらいに。
「やっぱり、綺麗だね。星」
「ナギサってほんと星が好きだよね」
ナギサはギラギラと光る星たちを眺めながら言う。ティーナには、なぜ星が綺麗に見えるのかがよくわからなかった。でも、いつも楽しそうに星を見るナギサの姿が好きで、いつのまにか見てしまう。
「あれ、あれなんて言うんだっけ?」
「あれ? あぁ、おうし座のことか」
「そう、それ!」
ティーナは、いつもナギサが星について詳しく教えてくるので、とても星座や星に詳しくなっていた。記憶力がいいおかげで、ナギサが教えたほとんどを覚えている。しかし、やはり星が綺麗という感覚はわからない。ティーナにとっては、星はただの空に浮かぶ物体だからだ。
「……そろそろか」
「?」
ティーナが首を傾(かし)げると、ナギサはつぶやいた。