【前回記事を読む】「生きて」―彼女はクシャっと顔を緩めて満面の笑みでそう言った。直後、接近してきたロボットがドォン!! と…

第一章 ロボットと少女

なんでもないよ

数か月後

ティーナは大量に持ってきた食料のおかげで、なんとか駅で生き残っていた。ナギサは壁に寄りかからせて、ティーナは駅の売店でずっと夜を過ごしていた。しかし、もう食料も底をついてきて、動かなくなったナギサの体には苔が生え始めた。もう、生きる気力を失ってナギサの姿を見に行くこともやめた。ナギサの姿を見ると、泣きそうになるからだ。

もう、わかっていた。

ナギサは、「壊れた」んだ。

ロボットを修理する方法なんて知らない。ナギサがどうして壊れてしまったのかもわからない。ただひとつわかるのは、もうナギサには会えないということ。

ふと、残りの食料が入った袋に目線を移す。

ほとんど空っぽになった袋の中には、パンの耳が二つだけ。

あれがなくなったら、自分は……死へのカウントダウンが、迫っていた。

「おなかが空きすぎて、一人ぼっちのまま死ぬんだ。あーしは……」

ティーナは孤独が大嫌いだった。

単なる「嫌い」ではない。孤独はティーナにとってはアレルギーのようなものだった。孤独を味わうと、恐怖が無限に湧いて、涙がぼろぼろと出てくる。もうどこにも自分の居場所はないんじゃないか。そう思ってしまう。

もう、誰もいないんじゃないか、自分は世界に一人ぼっちなんじゃないか。そう思い込む。

そんな孤独を埋めてくれたのがナギサだった。

ティーナはナギサ以外の話し相手がいなかった。

自分には親がいなくて、いたとしても、もう遠いどこかにいるか、とっくに死んでいる。それはなぜか、赤ん坊の時から理解できた。