目がやけどしそうなほどの眩しい光と共に、爆発音のような、なにかに思いっきり当たったかのような音があたりに響く。

ロケットは、見えない何かに当たって砕け散った。

よく目を凝らして見ると、空には駅全体を覆う、バリアのような透明な幕がドーム状に張られていて、それがロケットを防いでいた。ここに来た時には、あんなものなかったはずだ。

「えっ、え? どうして?」

ナギサから手を放して見に行こうとした。しかし、ティーナの手はナギサに握られていて離せない。

「ナギサ、ごめん手ぇ離して」

ナギサにそう言った。でも、ナギサはまた返事をしない。

「ねぇ、ナギサってば。返事くらいしてよ。また無視?」

少し、怒っているように言ってみた。それでもナギサは返事をしない。無表情な顔で、光のない目で突っ立っている。

「ナギサ?」

そのあと、何度も名前を呼んだ。それでも、無視をするから、少し強めに手を引っ張った。それでもナギサは動かない。不安が徐々に、胸を押しつぶす。どんどんと声は、震えた怒鳴り声になっていった。

「ねぇ! ふざけるのもいいかげんにしてよ!」

今までの人生でこれほどの大きな声を出したことがない。不安と、「もしも」という焦りでやや八つ当たりぎみになっていた。

「ナギサ!!」

そういって、ナギサの体を揺さぶる。すると体はバランスを崩して、地面に倒れこんだ。さっきまで体に滾(たぎ)っていた怒りがさっとひいていく。

ティーナはナギサに駆け寄り、ナギサを起こして謝ろうと思った。ナギサの体を持って、ゆっくりと持ち上げる。倒れないように壁に寄りかからせて座らせた。

「ナギサ、ごめ——」

言葉が出てこなかった。ナギサを見たからだ。ナギサは倒れても表情一つ変えず、置物のように横たわっている。さっきまで隣にいてくれた人は、動かなくなってしまっている。

「……いや、だ。いやだよ、ナギサぁ……」

もしかしたら、もう、

ナギサが動くことはないのかもしれない。

次回更新は6月18日(水)、12時の予定です。

 

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