大田原の説明が熱を帯びてきた。井原は彼の説明を神妙な顔で聞き入っている。

「そしてついに時のフランス大統領ド・ゴールが独立承認に動き、これを阻止しようとする秘密軍事組織(OAS)がド・ゴール暗殺計画を企てた。これが所謂ジャッカルの日だ。だがこれは失敗に終わった」

「あっ、それは本で読みました。フレデリック・フォーサイスですよね」

「そうだ、結局暗殺は失敗し、アルジェリアは一九六二年についに独立した。だが、独立はしたものの、フランスとの関係は、特に経済面で色濃く残っている」

「真の独立国とは言えないような状況だったのですかねえ。フランスにおんぶにだっこのような」

「その通りだな。ところが独立から十一年後の一九七三年末(昭和四八年)に突然オイルショックが起きたのは君もよく知るところだろう」

「はい、原油価格が一バーレル(一五九リッター)あたり二USドルから十二USドルへと跳ね上がったのですね」

「そうだ、オイルマネーは樽からあふれ出たのだ」

「それがアルジェリアにどんな変化をもたらしたのかは午後の部にして、昼飯に行こうか」

「はい、講義ありがとうございました」昼飯と聞いて緊張が解けた井原は嬉しそうに白い歯を見せた。

「ちゃんとしたレストランに行くと時間がかかるし、ローカルの飯屋は衛生上あまり薦められないので、もっぱら我々は近くのベトナム料理店に行くが、いいか?」

「もちろんです」