【前回の記事を読む】「痛み」を感じないためのトレーニング!? ――病を認識させ、生存上で重要な役割の「痛み」。この利点は活かして副作用を抑え…

2.もしあの世がないとしたら、自殺についてどのように考えるか

2.1 命(意識)と自殺

津村:重度のうつ病になってしまった場合は、薬の処方が有効である場合が多いと考えますので、そういう処方の必要な人を見つけることが重要になります。

それと、うつ病になるきっかけは、ストレスが原因であることが多いので、本能と環境の相互作用などをもっと科学的に解析することです。

うつ病になる前に皆が自分の本当の状態を認知するトレーニングをする必要があると思います。認知することで早く投薬治療をしたり、認知療法(参考図書1)のような形をとることができます。

学生:認知療法ですか。

津村:認知療法は広い分野ですので、ここでは私の考える一部を話しますね。私たちは本能や社会的本能の中で、どうしても、それらの副作用からストレスを蓄積してしまいがちです。

しかし、それらのストレスが本能や社会的本能の中で引き起こされるものであると理解し、そのストレスの源に対し、無価値の世の中では、その源はどうでもよいといった考え方ができれば、ストレスも消えていくのかなと思います。

執着をなくすといった表現が正しいと思います。

学生:ぼんやりとはわかるのですが、ストレスの源への執着をなくすというのは具体的にどういうことですか?

津村:確かに抽象的でしたね。例えば、仕事がストレスの源なら、仕事を思い切って休んでみることです。本来、仕事を休んでもとくに問題はないのに、勤勉でなければいけないという旧来の価値観、社会からドロップアウトできないという強迫観念から、休めない状況に自ら陥りがちです。奇跡の命のほうが絶対に大事なのに、本能の副作用で執着してしまうんですね。