本能とは、我々人間を含む動物が生まれつき持つ、ある行動へと駆り立てる性質のことを指します。本能は生物の生存に関する淘汰の流れの中で生み出された、貴重な性質ですが、現在の急激な環境(社会環境など)の変化の中では副作用を起こしています。私は、その副作用を計測・解析・理解し、緩和し幸福へと導く方法を研究しています。

本書では、逃避反応のように危険を感じたときに反射的に逃げる行動のような単純な本能に加えて、人同士の関わりにおいて生じる嫉妬反応などの社会的な本能も併せて考え、本能や社会的本能といった表現を用います。

はじめに

私は大学の理工学系の教員として教育と研究を行っています。

私の専門分野はカメラによる生体計測です。カメラを使って、非接触で心拍数や血圧などの生体情報を計測します。

これにより自律神経や感情の状態などをリアルタイムで把握でき、例えば大事なプレゼンの前など、本人は自覚していなくても不安を感じそうな場面で、「あなたは無意識に緊張しているので深呼吸をしてみると良いですよ」などと耳元でささやくことができます。

こういうフィードバックを「介入」とも言い、適切な介入をすることで、私たちはもっとうまく生きることができるのではないかと考えます。

本書は、人への介入により生きがいを向上させることを目指し、そのために必要な生きがいのモデル化(定義)を私なりに試みたものです。

生きがいとは何かを考えるために、400冊以上の本(多くは啓蒙書)を乱読しました。同時に、生きがいとは何か、人間とは何かを自分で一生懸命考えました。そして、もしあの世がないとしたらと仮定して、生きがいを考えてみることにしました。そうすることで、私たちの中の新たな希望のともし方を私なりに見出すことができました、少しでも皆様のお役に立てるところがあれば幸いです。