学生:〝あの世がなかったら〟となると、なんだか不安でいっぱいですが、どうなるのですか?
津村:非常に簡単ですよ。〝あの世がなかったら〟死んでも生きている世界を感じることはできないし、まあ、良く言えば、苦しみも喜びもない。悪く言えば、なんにもないのです。なにもないことも意識できないので、まさに〝無〟ですね。死とともに自分の意識のすべてが消えるのです。
学生:なんだか怖いです。今生きている私はなんなのですか?
津村:まだすべてが解明されたわけではないですが、生物の淘汰の歴史の中で、環境と相互作用し進化し、生き残ってきた存在です。昔、『利己的な遺伝子』(参考図書1)という本を書いた人がいましたが、その通り、自らのコピーを増やすことを優先する遺伝子が残ってきただけの存在です。
学生:自分の生きる価値まで、ちょっと蹂躙された感じがするのですけど。
津村:生きる価値や生きがいなどは、確かに簡単に話せるものではないと私も思いますよ。大変ですが、話を続けますか?
学生:非常に気になります。
津村:それでは続けましょう。
参考図書1. 利己的な遺伝子 40周年記念版 リチャード・ドーキンス (著)、 日髙敏隆、 岸 由二、羽田節子、垂水雄二(訳)、紀伊國屋書店、2018
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