【前回記事を読む】「息子の顔が見たい」と言う妻に、私は「後でゆっくりね」と言ってしまった。だがそのあと妻は意識を失い、我が子に会えないまま…
一人十色
息子が壊れ始めたのを知ったのは保育所から私に連絡があったからだ。「家で何か変わったことありませんか」と言われ、注視するようにした。
ある日風邪をひいた息子の部屋の物入れから「おもらしをしたシーツ」を見つけた。息子に「なぜここに置いたのか?」と問い詰めたら「ママにしかられるから……」と答えた。
高熱で苦しんでいる三歳児が新しいシーツを取り出し、汚れたシーツと交換して隠してしまうことに驚いた、と同時に今まで気が付かなかった自分に腹が立ち、息子に詫びた。妻にそのことを告げると泣きながら今までのことを吐露し始める。
任せきりにした自分を猛省したが手遅れだった。カウンセリングにも行ったが功を奏しなかった。
幾度も話し合いをしたが修復することはできなかったので、離婚を選択する。
娘と離れるのは私も息子も嫌だったが、二人を育てていく自信が無いので娘は妻が引き取ることになり、妹が大好きな息子には取り返せない心の傷を作ってしまった。
再婚して三年目の少し肌寒い秋の出来事である。お袋がまた北海道から飛んできた。
三人の生活が再度訪れると駆け足で時は過ぎて行き、息子も著しく成長していった。それに比例するかのように、高齢なお袋の体調も少しずつ崩れ始めた。