暖かい十二月の初め、息子の保育所最後の「お遊戯会」を見に行くと、お袋は終始孫の活躍を嬉しそうに見ている。
昼食は孫の好きなものを食べに行くことにした。これが三人で行った最後の外食となる。
その日の夜遅くに自分の部屋で職場から持ち帰った残りの仕事をして、キッチンに飲み物を取りに行くと、リビングでお袋が倒れていた。救急車で病院に運ばれたが為す術がなかった。楽しみにしていた入学式の四か月前の出来事である。
ふたりの生活が始まった。仕事をしながらの子育ては非常に大変であるが、新たな発見があり、充実はしていた。
しかし息子と共にする時間を重視したいので、職場の配置転換を願い出た。所謂閑職である。出世や地位などどうでもよかった。
と同時にお子さんが既に独立しているベテランの家政婦さんにも来てもらうことができた。ベテランの家政婦さんだけあって息子との関係は瞬く間に近くなっていた。
後にも先にもこの家政婦さんに息子を素直な子どもにしていただいたと感謝している。
新しい職場にも慣れて定時に帰れる環境も整い、家政婦さんの協力も得てそれなりに生活することができた。息子の学校の行事にも参加してくれる家政婦さんには頭が下がる。
そんなさなかにまた癌が見つかった。早期の胃癌である。一度大腸癌を発症しているので病院が慎重に検診を遂行した結果だった。
一週間の入院の間は家政婦さんにお願いすることになり、息子は親の心配より家政婦さんの家で過ごせることが気に入ったようだった。