卵は食べ物ですか
私はいろいろな人に「卵は食べ物ですか?」と尋ねます。すると、ほとんどの人がこう反問してきます。「何か問題があるんですか? 卵は食べ物ではなく、見るものだとでもおっしゃりたいのですか?」と。
そう反問するのは、スーパーや家庭の冷蔵庫にある卵しか見たことがない人たちです。
私たちにとって卵はシンプルで、ありふれた食材のひとつです。多くの人は、子どもの頃から「卵は食べ物である」と教わってきたでしょう。
卵は栄養価が高く、多くの美味しい料理の基礎となります。目玉焼きは料理初心者にとって最も簡単な料理のひとつですし、ゆで卵は外出時の手軽な食べ物の代表格です。また、卵は多くの料理の材料としても活躍します。高級なケーキを作るのにも欠かせません。
卵は料理の世界で無限の可能性を秘めています。栄養バランスも優れており、人体の健康維持や成長促進に積極的な効果をもたらします。しかし、実際のところ、卵は本来「食べ物」ではないのです。
約20年前、私が病気で入院していたときのことです。ある日の夕食後、動物の世界を紹介するテレビ番組を見ていました。画面には、卵を産んだ母鶏が巣箱から出ようとしているところが映っていました。その後、母鶏がいなくなると、近くに隠れていたキツネが現れ、卵を食べてしまいました。その瞬間、私は大きな衝撃を受けました。
そのとき、気づいたのです。卵は本来、私たちが食べるために存在するものではなく、鶏の遺伝子を次世代に伝えるためにあるのだと。もちろん、人間にとって卵は栄養源であることに変わりありませんが、次世代に遺伝子を伝えるという本来の用途からは逸脱しているとも言えます。