【前回記事を読む】1mの真ん中はどこですか?――「0.5m」は数学の世界では正解。だが、経験を積んだ技術者や有能な政治家はこの問いに…

Ⅰ 1メートルの真ん中はどこですか

人類の文明の元になったものを三つあげなさい

たとえば「長さ」の単位が明確にされていなければ、多くの人が共同で大きな建物を作ったりすることはできません。

また「時」の単位が明確にされていなければ、そもそも多くの人が同じ時間に同じ場所に集まって共同で作業することもできません。

いいかえれば「物差し」の発明によって人類は客観性を手にいれたのです。絶対的な王権をもったエジプトのファラオも長さや重さ、時などの物差しからは自由ではありませんでした。

さらに物差しは具体的なものを比較するための道具から、もっと抽象的なものを比較する――評価する道具へと進化していきました。

私は未開の社会と文明社会の区別は、そこに「時」というものが存在するかどうかだと思っています。「時」を計る時計もまた「物差し」といえます。

また独裁的な社会か民主的な社会かの区別も、その社会における善悪の評価基準となる「物差し」が明確になっているかどうかで判断できると思います。いいかえれば独裁社会に「物差し」は必要ないのです。

動物は物差しをもっていません。「物差し」をもっているのは、人間だけです。

そして人間は、その人自身の特別な物差しをもつことも重要です。