【前回記事を読む】人間にとっていちばん大事なのは「モノの見方、考え方」 1メートルの真ん中はどこですか? 答えは......

Ⅰ 1メートルの真ん中はどこですか

1メートルの真ん中はどこですか

「1メートルの真ん中が0.5メートル」というのは数学の世界では正解です。でも実際の物づくりの世界では、そうではないとお父さんは宗一郎に教えました。

この話は理論の世界の正解と現実社会の正解に置き換えることができます。

「1メートルの真ん中」というものは、厳密に決めることは困難で「端から0・5メートルを中心にしたある幅の中にある」と考えるしかありません。それなのに理論の世界での正解ばかり求める人は、ありもしない「1メートルの真ん中」にこだわりすぎます。

もっと自由自在に思考を巡らせることが重要です。何事も、ある幅をいつも頭の中に置いておくことが肝心なのです。

常に妥協点を見つける姿勢が大切といってもいいかもしれません。そういう姿勢をもっていないと自分も相手も追い詰めることになって、いいことはひとつもありません。

最後は喧嘩になってしまいます。個人なら喧嘩で済みますが、国同士だと戦争さえ起こりかねません。

経験を積んだ技術者は、「1メートルの真ん中はどこですか」という問いに、いくつもの答えをもっています。技術者だけでなく有能な政治家も、こういう問答の対応がうまいものです。

この話は学校と現実の社会の違いに置き換えることもできます。