【前回の記事を読む】ドミニカ一日目の朝。食卓にあったのは日本では貴重なバナナ! 慎ちゃんは弟たちと一緒に「うああ、バナナっておいしいねえ」
第一章
(三)家の周りから冒険
家の周りの地面には直径二センチほどの無数の穴がありました。
(なんやろう?)
棒で穴をつつくと、びっくりするほど大きなクモが出て来ました。それは、入り口付近で慎ちゃんたち兄弟をグッとにらみつけたあと、すぐに中にスルスルッと引っこんで行きました。
大きな穴には、大きなクモ。小さな穴には小さなクモ。
慎ちゃんたちは面白くなって、大きな穴を探しては、棒でつっついたり、近くにあった空きかんに近くの小川の水をくんできて、そのクモの穴にそそぎます。
そのたびに、クモはにわか雨でもやってきたのかと、大あわてで出てきます。でも、そうじゃないことを確認すると、すぐまた穴の奥へスルスルッともどって行きます。クモにとっては大めいわくだったことでしょう。
つぎに発見したのは、家の後ろの木の根っこに住む生き物たち。それは、アリ。
「うあー、譲二、まち子、みれ、みれ、大きなアリの巣やぞ」
慎ちゃんは、昔からアリをつかまえてはビンにいれ、砂糖をあげてアリたちに巣作りをさせるのが大好きだったので、もううれしくなって大声で二人を呼びました。
あずきのような形をした頭でっかちの兵隊アリや、小さな赤い働きアリが、忙しそうに穴の中に出入りしているのが見えました。
慎ちゃんが落ちていた小さな木の枝で巣をちょんとつつくと、大量のアリが穴からどっと出て来ました。中にはもう白い卵をくわえてあっちに行ったりこっちに行ったりするアリたちが。
突然、譲二ちゃんがさけびました。
「イタッ!」
見ると、一匹のアリが、体を「くの字」にまげて、譲二ちゃんの足の小指に食らいついていたのです。慎ちゃんは急いでアリをはたき落としてあげました。