【前回記事を読む】AIが急速かつディープに学びを進める今、人間は何を学ぶべき? ――AIと協働する時代、これからのビジネスパーソンに向けて…
序 ロスト・イン・トランスフォーメーション
【主な登場人物】
ネイビー
□〈Patina〉店主。
□能美誠一(57)は、いつも白いカットソーに濃紺のオープンシャツを羽織っている。常連からは、ネイビーと呼ばれる。ゆるみの少ない身体。白髪が少し混じる髪を、側面は刈り上げ、上でふわりと七三に分けている。
□彼の経歴が店で語られることは、あまりない。噂では、総合商社で数多の案件を手掛けたらしい。店を営みつつ、旧知のネットワークから依頼される事業開発や人財育成のサポートも行っている。
タエさん
□青木多恵(51)は、仕入れから厨房、経理など、店の奥を仕切る物静かな女性だ。たまご形のつるんとした顔立ちに、幅広の黒いヘアバンド、シャツもパンツも細身の黒。画廊のキュレーターあたりを思わせるスタイルに、なぜか森英恵風の花柄エプロンを合わせている。
□ちなみに〈Patina〉は、メニューを置かない。食べるものは掌サイズの小皿が三品。庶民的な季節の野菜や魚介、フルーツなどが、ていねいに仕込まれて日替わりで供される。
YOさん
□双子の兄、吉岡洋介(45)。平たい顔に、しっかりとした顎。中背だがラガーマンのように厚みのある身体つき。無精なようで手入れされた短いヒゲが、刈り込んだ髪につながる。
□家業の工務店を、先代の父親と拡大した。〈YO HOME〉と胸にネームの入ったベージュ色の作業ジャンパーで、店に現れる。
Keiさん
□双子の弟、吉岡啓介(45)。平たい顔に、しっかりとした顎。中背だが野球選手のように足腰がたくましい。60年代風の太いモミアゲが、大きなウェーブの髪につながる。
□大手食品スーパーに勤め、店舗運営やプライベート・ブランド飲料の開発マネージャーを経て、3年前から人財開発室長。