「昼からアルコール」

「お酒でも飲まなければ、もう耐えられない。今日は一日、付き合ってもらうからね。工場から連絡があるまで一緒にいて、お願い」

冬瓜と豆腐のスープが運ばれてくる。はすの実の香りがする。

「私、怖いの。わかるでしょ」

「だけど、君を助けられなかったら」

「申し訳ないけど、あなたも破滅するの」

毛蟹入りオムレツが続いた。

午後になり、郡山工場の宮澤から里見の携帯に電話が入った。

「黒服の男が来てますけど、部長から預かったっていうサンプルを受け取りました」

黒服の男が出発して、わずか3時間しか経っていない。ベンツで高速を飛ばしていったのだろうか。

「分析はすぐ終わりました。スマホにデータを転送します。成分的には問題なさそうですけど」

「それで、作れそうか」

「今からですか?」

「大切なクライアントからのサンプル依頼だ。最優先でやってくれないか」

普段から実直な宮澤は、仕事人間の里見の声色から、重要性を察した。

次回更新は6月25日(水)、22時の予定です。

 

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