【前回の記事を読む】「すべて最高のスープを作るために試す食材」明らかに、食材を人に見せることに喜びを感じていた
第3話 最高のスープ
里見は少し呆れた。先ほど見せられた高級食材を思い出した、素材をそのまま料理して楽しめばと思う。
「あなたがさっき見た食材はすべてスープに加える食材よ」
「時代で味に流行とかあるのか」
「昔は燻製とか干し肉とか入れられたけど、最近はないわ。フランス料理の影響で、焼いた仔牛の骨や、乾燥させた豚の筋を入れたりするようになったけど」
製法の話になり里見の興味も増す。
「それに、ヌーベルキュイジーヌの隆盛期には、野菜やキノコが増えたりね」
「なぜ、赤白二つの鍋がある?」
「香港のときに二つに分けられたの。魚介系と肉類系にね。魚介が白鍋、肉類が赤鍋ね。突き詰めて洗練するため」
「滋養強壮よりテイストか」
「そうね、最初は鉄鍋を石炭で炊いていたけど、いつか鍋はブロンズになり、熱源がガスになると、アルミになり、今は内側が鏡面ステンレススチールの鍋」
「ステンレスなら味に影響しないからね。しかも鏡面加工まで施すなんて」
内心呆れた里見に玲蓮が話を続ける。
「最初は、住民たちの単なる食事。長く火を切らさなかったことで、いつの間にか火を絶やさず伝承することが目的となり、今や味を追求することが目的になってる。最近の長老たちのテーマは、究極のスープを完成すること」
「それは幻想だろ」
玲蓮の顔がまた険しくなった。色白のため冷たく見える。
「来週8人の長老が世界から集まるの。ここのスープを飲むために」
「長老たちが、スープを飲むために?」
「もちろんそれだけではないけど、彼らの最大の楽しみはスープ。毎回、スープの味を確かめてから、次回に加える材料を決めるの、長老たちが、このスープに合う食材を議論してね」
「そんなので決めるのか、相性もあるのに」