「2日目に煮詰まって、サーモが働いて自動停止して干上がらなかったけど、蒸発で水位が下がった部分が当たってしまった。焦げて、焦げ臭がスープに回ってしまって、もう取り返しがつかないの。春節の後に、世界中から長老がスープの試飲に集まるのに」
「料理長に相談したら」
「料理長は里帰り中で、火曜に戻る。でも状況を知ったら長老たちに、すぐ報告するわ。誰だって連座責任なんて負いたくないでしょ、自分の管理責任を追及されないように、私を告発するわ」
「このことを知っているのは?」
「何が起こったのか知っているのは、私と貴方だけ」
「副料理長は月曜に来るけど、今は何も知らなない。バイトの学生はマニュアル通りやっただけで、何が起こったかも知らない。そもそも、ここで何をしているのかも知らない。試作室ぐらいにしか思っていないわ。彼には鍋を交換させて、洗浄させたわ」
「大丈夫かよ」
「バイトは日曜のシフトで終わり。大学4年生で、就職も決まっていて、来週からアメリカに卒業旅行に行くって言っていた」
次回更新は6月24日(火)、22時の予定です。
【イチオシ記事】妻の姉をソファーに連れて行き、そこにそっと横たえた。彼女は泣き続けながらも、それに抵抗することはなかった