【前回の記事を読む】目の前に出された4つのスープ。――そのうち2つは紛れもなく最高のスープだった
第3話 最高のスープ
「ここは乾物の保管庫。インデックスを見てよ」
暗いガラス窓越しに様々な食材が棚に並んでいる。干しアワビ・干し貝柱・フカヒレ・サメの尾ヒレの付け根部分(魚唇(ユイチェン))・魚の皮・魚の浮き袋・干し白子・干し海老・するめ・干しナマコ・干しシイタケ・干しナツメ・昆布・朝鮮人参・干し竜眼(りゅうがん)・枸杞子(くこし)……。
一つのハッチの中は棚割りされていて、さらにいくつかの種類に分かれている。例えば魚の皮のハッチの棚には、クエの皮・マンボウの皮・うつぼの皮。
「ここにあるフカヒレは4種類。総額180万円を超えるわ」
「すごい」
「これがスープの材料よ」
通路をさらに行くと冷凍庫と冷蔵庫になった。冷凍庫の表示には血抜きした牛タン・アヒル・牡蠣・伊勢海老・オックステール・豚足・烏骨鶏(うこっけい)・シャラン鴨・金目鯛・平目・タカアシガニ・上海蟹・マナガツオ・トコブシ・仔牛のスネと並ぶ。
冷蔵倉庫のリストには、金華ハム・鳩の卵・豚の筋・豚ヒレ肉・鶏胸肉……と続く。
さらに通路はL字に折れ、その先に移る。間取りは同じだが、こちらのハッチは低温庫になっている。黒トリュフ、白トリュフ、香茸(こうたけ)、黒舞茸(くろまいたけ)が並んでいる。
「まるでグルメ博物館だね」
「すべて最高のスープを作るために試す食材」
明らかに、玲蓮は食材を人に見せることに喜びを感じていた。
「いくらあるんだろう」
「そうね、総額9000万円はあるわ。今ある在庫の金額で家が買える」
「在庫を把握しているんだね」
「そりゃそうよ。私は代表取締役社長よ。損益計算書はキッチリ見るわよ。毎月棚卸しはチェックしてるの」