【前回の記事を読む】その場で『賃貸借契約書』を交わした。不安は感じたが、住田不動産からの紹介だし、小遣いになればいいか、と…。本当に軽率だった。
2、言わせてもらえば
私は音大を出て、もう十年も経つベテラン教師ということになっているし、指導力には自信があるわ。
あのピアノもまあまあ使えるし、机や椅子も適当に揃っているし、私の持ち出しが少なくてありがたいわ。
教室の名前は『飛鳥ピアノ教室』と決めたけど、なかなかいい名前じゃない。オープンまでにもう少し準備をしておかなくちゃ。
チラシに載せた通り、当分の間レッスン時間は一回三十分として、月謝も最初は相場より安くして、段階的に値上げすればいいか。
あとは生徒さんがたくさん来ることを願うだけ。落ち着くまでは彼の今のアパートから通うことにするけど、五十分もかかるので、教材の本などを電車で運ぶのは無理だわ。
そうだ。家主の村木さん宅に、直接私宛に宅配で送ればいいんだわ。さあて、どんな生徒が入ってくるか楽しみだわ。
(村木)
私は、影山さんが少しでも使いやすいようにと、協力を惜しまず準備の手伝いをしました。
そのための多少の出費は仕方ないと、まずは肝心のピアノの調律を済ませたり、リビングの模様替えをしたりと、忙(せわ)しない日が続きました。