【前回の記事を読む】週3日の時間貸しのはずが…家主に一言の断わりもなく、ドアの前を塞ぐように『飛鳥ピアノ教室』と巨大なのぼり旗が出現。

2、言わせてもらえば

(村木)

早速次の日に、再び住田不動産に出向いて、事の次第を話しました。

「そういうことなら仕方ないですね。では解約通知書を書いて、自宅に送ったらどうですか」

と言うので、私は「賃貸借契約の解約通知書」の書き方を教わり、パソコンで打って作成し、件(くだん)のアパートに送りました。でも、そこに住んでいないことはわかっていましたので、彼女のケイタイにメールを入れました。

「ご住所のほうに書類を送付させていただきましたので、ご確認よろしくお願いいたします」

その後、半月経っても何の返答もありませんでした。ピアノ教室は、相変わらずレッスンが続いています。同じ屋根の下にいながら、何も返事がないといらいらしながら待っていましたが、メールを無視しているのか、一向に埒が明きません。いっそ勇気を出して声をかけてみようかと思いました。

(影山)

またしてもウザイおばさんだこと。家賃はこの間振り込んだわよ。あんまりうるさいから無視していたのに、またメールが来たみたい。

今度は何よ。メールを開くのも嫌だし、返信も面倒だわ。私のやることにしつこく口出しされて、いちいち相手にしていたら身が持たないわ。既読スルーにしておこう。

もういい加減ピアノ教室をやめたくなったわ。赤字で商売繁盛どころか、厄除けにもなってない。あの神札も効き目がないわね。看板だって目立つように外に張り出してあるのに、誰も見ていないのかしら。

こないだは室内展示ボードに村木さんのメモが貼ってあったけど、勝手に入って覗いたのね。「玄関前にあるのぼり旗を片付けて帰ってくれ」だって。邪魔になるなら、自分で退かせばいいじゃない。

まったく次々と細かくて、ホント窮屈だわ。だから昭和生まれの人は、「マジだるい」って嫌われるのよ。(例外もあるけど……)あの人はどうして心にゆとりがないのかしら。

後で彼に相談して、もっと静かな場所を探そうかな。

(村木)

私は何をどう話そうかと考えて、数日悶々とした日を過ごしました。彼女の気持ちを傷つけないようにと気遣いながら、教室が終わった頃を見計らって、勇気を出して声をかけました。

「今ちょっと、お話大丈夫ですか?」

と言って、アコーディオンカーテンを開けると、「はい」と返事がありました。後片付けをしていたようです。

「このあいだ書類をアパートに送って、メールでもお知らせしたはずですが、届いていますか? お返事がないので気になっていたのです」

「いえ、知りません。後で確認します」

「いつなら確認のお返事が頂けますか?」

「二週間後くらいになります。もう帰るので……」

「そんなに! なるべく早くお願いしますね」

迷惑そうなオーラと返事に、それ以上話せずに引き下がってしまいました。もっとよく話し合いたかったけれど、取り付く島もありません。彼女は挨拶もなく、黙って帰ってしまいました。

一体私のどこが気に入らないのだろうと思っていると、私のケイタイにメールが入りました。帰りの電車の中から送信したようです。