「前にも話しましたが、時間内の教室に勝手に入らないようにお願いします」

時間内って。レッスンも終わって子どもが帰った後ですし、彼女が帰る前でないと話す機会はありません。何と高飛車な言い方でしょう。

これでは話し合いどころか、水と油の関係です。事態は悪化するばかり、もう私もあきらめて、そっと成り行きを見守る以外ありませんでした。二週間後に彼女からどんな返事が来るかは、まったくわかりません。

(影山)

ついにヤバくなってきたわ。何よ、私のやることが、そんなに気になるの。さっきは、突然あの人が部屋に入ってきて驚いたわ。変に馬鹿丁寧に話しかけてきて、まったくムカついたわ。

あれほど仕事中は入らないようにと決めたのに、どうして守れないのかしら。ぶっちゃけウザいのよ。マジで嫌みなお婆さんだわ。年を取ると皆ああなるのかしら。

こないだの日曜日に、仕方なく向こうのアパートに行ってきたわ。ポストの中にあった封筒を開けてみたら、解約通知書だって! 私の都合も聞かないで、一方的に決めて黙っていたなんて、ひどい人ね。そっちがその気なら、こちらも考えなくちゃ。

どうせそんなことだろうと思っていたわ。この前、それとなく彼に相談しておいたら、別な良い場所を見つけたから、そこに引っ越せばいいよだって。さすがやることが早いし、頼りになるわ。

早速見に行ってきたけど、今度の場所は誰も住んでいない離れになっていて、ピアノは勿論あるし、環境も良さそうだったわ。

そういえば、窓辺の日当たりの良い場所で、黒猫が日向ぼっこしているのを見かけたけど、飼っているのかしら。彼の話では、その家の庭は野良猫のたまり場になっているらしい。

それで、猫嫌いの私のために猫が寄り付かないように、離れの窓辺に匂いの強いハーブの鉢を何個か置いてくれたみたい。そんなので大丈夫かしら。ともかく猫が寄り付かなければいいんだし、ピアノ教室には特に問題ないと思うわ。

うるさく言うおばさんもいないし、ホント運が良かった。子どもの保護者には、もっといい環境の場所に移転すると通知を出しておいたし、今度こそうまくいくはずよ。

さて、引っ越しの準備をしなくちゃ。悔しいから、村木さんに見つからないように少しずつやらなきゃね。向こうから解約通知を寄こしたのだから、黙って従ってやるわよ。もうこれ以上我慢できない。〝後は野となれ山となれ〟よ。一日も早く清々(せいせい)したいものだわ。いつ実行するか日にちを決めて、荷物は宅配にお願いしてと……。

 

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

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