――二週間後。三万円を返送する手紙を、二日がかり延べ五時間以上を費やし、推敲を重ねて書き上げた。

そして二度ばかり読み返し、折角書き上げた弁明だらけの手紙を破り捨て、ものの十分もかけず、便箋半分の短い手紙を認(したた)め直した。

 

言いたいことは山ほどある。

そして、言って聴くような雅子でないことは、誰よりも知っている。俺は、雅子が幸せになってくれればいいんだ。

俺なんかより、ずっと素晴らしい男を見つけて、幸せになってくれ。

余計なお世話かも知れないが、俺は雅子が結婚するまで、絶対に結婚しない。気が変わったら、いつでも帰っておいで。

遅くなったけど同封の三万円は、生まれて初めてのアルバイトで稼いだ金だ。

未練たらしいけど、ちょっとでも見直してくれたら嬉しい。

今も大好きな雅子へ

 十一月二十九日  恭平

 

👉『イエスタデイを少しだけ』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】妻の姉をソファーに連れて行き、そこにそっと横たえた。彼女は泣き続けながらも、それに抵抗することはなかった

【注目記事】滑落者を発見。「もう一人はダメだ。もうそろそろ死ぬ。置いていくしかない…お前一人引き上げるので精一杯だ。」