「チア部だって、食べ物がいいと言うとは限らないよ」

チア部は昨年発足した小さい部だ。たまに体育館でフットサル部と重なる時間帯があるので多少の交流がある。

「大丈夫です! チア部の雨宮先輩にも話を持っていきました。そういうお話があるのなら、うちは喜んで参加しますって!」

真琴は根回しもうまい。紗英は分からないように小さくため息をついた。

「どうして、そんなに食べ物がいいの?」

「だって!」

真琴は目を丸くして言う。

「学園祭といったら、絶対食べ物でしょう!」

真琴の気持ちも分からなくはない。誰も来ないゲームの店番を続けながら、焼きそばやたこ焼きの屋台の活気のある様子を見て、ああいうのが学園祭だよねと思っていた。

でも、フットサル部の部員の人数からいっても無理があるし、面倒なことは絶対反対されると思って、提案する勇気はなかったのだ。

「部長!」

そのとき、一人の部員から手が挙がった。紗英は思わず反対意見か、と期待した。 手を挙げているのは、一年生の立花みきだ。紗英はみきのほうを向いて、どうぞと発言を許した。

みきの赤いTシャツと緑のスウェットが目立つ。今日は赤と緑か……と紗英は思った。

「わたしも真琴先輩の意見に賛成です! 人数が少ないのであれば、合同でやったらいいというのも、名案だと思います!」

 

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