【前回記事を読む】開店資金もなく経営も分からないシングルマザーの私に「お店をやってみない?」…講座でご一緒した方から誘われた!
第一章 アジアへの憧憬と初めての店創り
1 最初の店は雇われ店長から
あなたの感性を生かしてお店をやってみない?
25年近く前の話なので、オーガニックやマクロビオティックが今ほど浸透していない時代でした。客層は限られているし、あまり売れない分野なので、自然食品店といえば、どこもギリギリの経営で、店舗は狭く、内装に凝っているおしゃれな店なんてほとんどありませんでした。
そんな中で、駅から近く、大通りに面した立地条件のいい、おしゃれで品揃えの多い自然食品店。これは絶対に注目されて、地域の人に愛され、人気の店になると私は確信していました。
ところがオープンが近づくにつれ、徐々にオーナーとの関係が気まずくなっていったのです。店舗が広いので、まずは自然食品を中心に揃え、空いている部分には私の好きな商品を並べてもいいという話でした。
ところが徐々に私の好きなものの比重が大きくなっていき、それがどんどんエスカレート。世間知らずの私は雇われ店長という立場を忘れ、自然食材だけでなく、エコ雑貨、オーガニック系の本やニューエイジの本、シュタイナー系のおもちゃ……さらに大好きなアジア雑貨やエスニック衣料など、自分の好きなものをせっせと仕入れては喜んでいました。
それがオーナーのイメージしていた店のコンセプトとずれてしまったようです。お金を出す人は口も出す。それは当然のこと。「あなたの感性を生かしてお店を作ってみない?」というオーナーの言葉を、自分の都合の良いように解釈し「私の好きなもの」を店内に所狭しと並べ、ひとり悦に入っていたのです。
もちろん私自身もベジタリアンで、オーガニックの食材やエコ雑貨は大好きでしたから、それらはメイン商品になっていましたが、それと同じくらいの展示スペースを取って、私の好きな商品を並べていたので「これじゃ、なんのお店だかわからない」と言われました。オーナーとギクシャクするのも当然の成り行きでした。
世間知らずの雇われ店長はオープン1ヶ月で辞任
そんな中でも無事にオープンまではこぎつけました。開店早々たくさんの方にお越しいただき、店内はいつも賑わっていました。私は接客に追われ、昼休みを取る時間もありません。
でもオーナーは店に来ても、私に休憩に入るようにとは一言も言わず、会えばいろいろ苦言ばかり(当然のことですが)。私も好きな商品ばかり仕入れたので、どれも愛おしく、オーナーにそれらを邪険にされると、とても悲しくなりました。