搭乗した日は二日違いで、外務省の職員とみられる観光目的の男は、シアトル空港に着いた後に救急搬送されたものの、その後死亡が確認された。

一方、社用の男は、シアトル空港で飛行機を乗り換えポートランド空港に着いた後、チェックインしたホテルのロビーで苦しみだし、そのまま息絶えてしまった。

関連性がないと言われればそうとも受け取れるが、成田空港から同じような移動手段をとっているので、全否定することはできなかった。

スージーはFBI所属のガブリエルから相談を受け、考えれば考えるほど、事件が一筋縄で解決できないような気がしてならなかった。そこで思い出したのが、清一だった。

二人の被害者が共に日本人で、成田空港から搭乗したという点を考慮すれば、警視庁勤務の時から名刑事と呼ばれていた清一には、うってつけの案件と思われた。

「大利家戸さんは」

スージーは、聞き役になっているような清一に、歯痒(はがゆ)さを感じていた。

「この時点で、二人の死亡を関連付けるのは無理かもしれない。でも、関係があるとみて捜査しておいたほうが、後々の捜査で支障が出ないものです」

「それは、どういう意味ですか」

ポートランド市警の若手刑事が聞いた。二宮 (にのみや)というその刑事は、そこそこ日本語はできるが、清一の話す日本語は難しいので、スージーの通訳を聞いて判断しているようだ。

「二人に共通している物証を、少しでも多く確保しておきたいからです」

 

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