【前回の記事を読む】真夜中に熟睡を脅かす物音が聞こえた。壁に耳を当てると、呻き声を伴っていた。
(一)
清一は覗き穴から外の様子を窺ってみた。そして、ドアを開けるときにもフックを外さなかった。これは、スージーに注意されていたことなので、細心の注意を払ってのことだが、飛び出した途端ボディーに強烈なパンチを食らってしまった。
続いて奥襟を掴まれて宙吊りにされると、夥(おびただ)しいパンチが飛んできた。最初は急所を外そうと手足をばたつかせていたが、二メートルを超える大男の体力は予想をはるかに超えていて、攻撃の手が弱まることはなかった。
そこで、清一は一旦この場を逃れることにした。ターゲットが清一本人であることが明確になったことを踏まえて、襲撃集団の黒幕を炙りだそうと考えたからだった。
清一は宙吊りになった状態から相手の股間めがけて痛烈な蹴りを入れた。それから、相手が怯(ひる)んだところで、鼻頭に頭突きを食らわせた。
宙吊りの状態から解放された清一は、一目散に逃げた。そして、ドリンクコーナーの前を通り過ぎてエレベーターホールに出ると、誰も乗っていないエレベーターに飛び乗った。
清一は、迷わず一階を目指した。一階ならフロントがあり何かしらの応援が得られると考えたからだったが、一階に着き開いた扉の先に見えたのは、奴等の仲間だった。清一は、急いで扉を閉め上階を目指した。
ここに至っては、エレベーターは勿論のこと、ホテルの管理室さえも相手の手中にあると考えておかなければならなかった。そこで、清一は一計を案じて、エレベーターが、二十階、二十一階、それから一階へと移動するように設定した。
エレベーターが二十階で停止して扉が開くと、案の定、奴等の仲間が待ち構えていた。清一は逃げるような素振りをして相手を中に誘い込むと、それぞれを一撃で捻じ伏せた。
それから、清一はエレベーターを作動させると、隣のエレベーターへ乗り込み二階を目指した。何かあった時には二階にあるランドリーが待ち合わせ場所だと、スージーに言われていたからだった。
「スージー、僕だ」
清一が、小さくノックして呼び掛けた。
「清一さん、大丈夫」
ロックが解除されドアが開いた。