「清一さん、間違って殺されたとでも考えているの」

「被害者が全くの一般人だったとしたら、そう考えておいたほうが小さいリスクで済む。今のところ、何らかの大きな組織との接点はまるで見当たらないんだろう」

清一はそこまで言って、言葉を切った。皿に盛りつけられた料理が、次々と運ばれてきたからだった。

清一がオレゴン州ポートランドにやってきたのは、里美の友達の安川スージーからたっての依頼があったからだった。

スージーは里美の友人だったということもあったが、三沢古間木(みさわふるまぎ)警察署に勤務していたとき捜査で協力してもらっていた。

そのスージーが里美を通じて協力依頼をしてきたのだから、無下に断ることができなかった。

スージーが協力した事件とは、清一が三沢古間木警察署に異動になってすぐの頃だった。北海道へ家族旅行していた時、偶然ジョージ少年を助けたことからだった。

ジョージの父親は米軍三沢基地所属の軍人だったが、千歳へのフライトの途中で殺されてしまい、ジョージは追われていた。

事件の概要は、二人の男がアメリカ・オレゴン州で不審な死を遂げたというものだった。清一は休暇願が受理されると、ショルダーバッグ一個だけという身軽さで成田空港からポートランドへ向かったのだった。

暫くの間、事件の話は忘れられた存在だったが、支払伝票にサインが済むと、息を吹き返したかのように関心事になった。

「やはり、別の事件とみておくべきだ」

ベテラン刑事が、大きなソーセージの塊をゴクリと飲み込んだ後に言った。

亡くなった二人の男はいずれも日本人だった。一人は社用で、もう一人は観光目的で渡航していて、日本での勤務先も住所も全く関連性がなかった。