【前回の記事を読む】海外製の修復でもっとも困難なのは不具合箇所がわかっても交換部品がまず入手できないこと

第5章 プラスチック製と金属製での修復方法の違い

Nゲージは1960年代に欧州で始まりました。

日本では1970年代当初よりプラスチック製品化が増え、製品バラツキも大きく、当時はABS樹脂の香港製なども交じってかなり玩具に近いものから欧州製のスケールモデルまで、金型成型技術が十分でなく下回りの走行構造部の品質にも幅がありました。

車体と下回りは、多くのメーカーではフックで引っ掛ける、あるいは嵌め込み程度で簡単に取り外すことができました。

しかし、今では内装部品の充実化、ライト配線内蔵化で配線接触させるための金具を固定するのでかなり位置関係・押圧強度がしっかりとできているので分離は慎重にしなければなりません。

車体の厚さも薄く弾力があるスチロール樹脂系が多く、3D設計技術と射出成型技術が格段に向上してディティールも一体化できるほど精巧になりました。力ずくで外そうとするとフックが折れたり、ドライバーでこじ開けると接触部が曲がってしまったりそして塗装を傷つけたり、また端子接続部接点を痛めたりしてしまいます。

国内外を問わずほとんどのメーカーの設計思想に、

①通電部のハンダ付けは極力行わない。従ってリード線も極力用いない。

②車輪~集電板、集電板~モーター端子間、ライト関係接点から床板部の接触部など通電接触部には0.15mm厚程度のリン青銅板を用い、弾力性があるので可動部でも通電できる。

③牽引力が必要な機関車類ではアルミ系ダイキャストブロック成形品を左右半分ずつに分け、モーター~駆動部ギヤ~台車固定部・電極部、回路板などを収納して固定部品を極力減らし、その上で通電性とウエイトを兼ねる。

④塗装では転写印刷(パッド印刷)の精度が大変上がり、曲面や塗分け、デザインも今までの塗分けと異なり塗装段差も少なく美しくできる。

ことがあるように思えます。

これは勿論メーカーの立場からすると、「どこの国でも容易に組立て、生産でき、外観も美しくしかも工数が少なくコストを抑える」ことに他なりません。一方、HOゲージ系でもプラスチック製車体が海外製はもとより国内製でも増えました。Nゲージ以上に下回りを中心としてのディティール一体成型が多くなされるようになっています。

欧州製電機や優等電車や固定編成列車などでは本体と下回りを外すのにも複数の内部フックによる嵌合が、見てもわからないほどの隙間なく精巧に組立てられているので外すのには同封されている説明書を見て、手順をじっくりと読み込んでから行う必要があります。また、ない場合は更に構造を慎重に見極めてから外す必要があります。

その際、後述しますが薄刃の取り外し工具がありますとドライバーとは異なり刃幅があるのでプラスチック成型部を傷つけずに外すのに大変重宝します。