【前回の記事を読む】運転前後でのメンテナンスが重要! 数年に1回程度、メンテナンスをしよう

第3章 各種電動車における不具合モードの具体例

3.1 蒸気機関車特有の不具合

4)本体とテンダー間の通電性

タンク型の蒸機では進行方向に対して先従輪や後従輪部又は動輪左側に集電ブラシを設けてN極を、動輪右側でS極を通電してモーターを回転させる方式が多いです。

一方、テンダー車ではN極をテンダー側の左車輪からテンダー本体に設けたポールに通電し、本体とこのポールを繋ぐ金属製の“ドローバー型カプラー”と呼ばれる板状の金具を通して本体にあるN極からモーターに結線して駆動する方式が多いです。

この“通電型ドローバー”でのオープンやショートしての導通性不具合が多く発生しています。

また、本体および台枠が金属製のことが多いHOゲージ系ではこの金属部の全てが片方の極性、具体的には進行に対し右側(+側)に接続されていることが多くショートを起こしやすいです。

因みにこのタイプの場合はデコーダと極性分離するためDCC化は不適当です。

このドローバー金具では次ページ図8のように、

①テンダー側のポールを挿し込む穴があり、そこにリン青銅製のバネ線で圧着して通電する仕組みとなっています。ここが錆びる、接触不良を起こすとオープン不良となり走行できなくなります。この場合、除錆するかバネ圧調整することで復帰します。

②本体側、多くはキャブ下部にリン青銅製バネと絶縁ブッシュ板を介してネジ止めで取り付け部があります。このネジにあるラグ板にハンダ付けされたリード線でモーター電極に結線されてモーターが回転します。

このとき、この部分の絶縁が確保できずショートしてしまう、または本体に触れてショートしがちになり不安定な走行となることが多いです。

この場合、絶縁ブッシュが割れてショートしていないか、線路上に置いて本体と接触し、ショートしていないか確認し、ブッシュの交換、止め部付近の絶縁距離をとる、あるいは熱収縮チューブを被せて絶縁するなどの調整が有効です。

筆者の経験ではこの部分は構造的にも傷みやすいのでこのドローバーと並行して外観を損なわないような1ピンの小型コネクタを設けて補完することを勧めています。