突然の発症・緊急手術・入院・胃切除手術での後遺症・抗がん剤の副作用など、そのときどきで苦しみましたが、今振り返りますと、長い、長いスキルス胃がんとの闘いの中での医師とのやりとり、そのときどきでの偶然、自分自身の回復への努力と決断などが結果的にラッキーとなり、今の健康体があります。

不思議な体験をしました。がんを発症して、死ぬのが少し怖くなくなりました。

もともと臆病で、小さいころから死ぬのは怖かったのですが、胃壁が破れたときの激痛は、このまま死んでもよい、死なせてくださいと哀願するほどでした。激痛に耐えることに精一杯で、死の恐怖など感じる余裕はありません。

細胞が崩れるとき、肉体は悲鳴をあげて死を知らせるのでしょうか。今思うと、これはすごくラッキーなことでした。

【死】が少し怖くなくなり悲観的な考え方をしなくなって、むしろ楽観的な考え方で闘病生活を過ごせました。【なるようにしかならない】との想いです。

これは精神面での感情起伏の安定効果としては、大きかったですね。くよくよと考えるよりは、前向きに毎日の生活を楽しんだほうが気持ちとしては楽ですよね。

現在の日本では、二人に一人はがんを発症・体験すると言われています。この苦しさは、体験した者でないとわかりません。

人生後半になってから私に訪れた突然の試練を、皆さま方にできる限り詳しくお伝えしたいと思います。

がんに対処する知識としてご参考になれば幸いです。

2023年7月1日 星野裕作