まず、通っていた小学校と中学校を訪ねて、遅刻、早退の記録や理由を探ろうとしたが、既に記録は処分されており手がかりはなかった。

中学校では、二年、三年時の担任がまだ在職中であったおかげで、当時の事情を聴取することが出来た。しかし、飯島めいの出欠のことまでは記憶にないという返事であった。

その上、たとえ記憶があったとしても、長期休学などでない限り病院の診断書などは必要でなく、遅刻、早退の場合は保護者からの連絡のみでよかったため、その理由までは分からないとのことであった。

田所は、しかしその元担任教師が何かを知っていると感じたが、分からないと断言されてしまったため、それ以上追及することは出来なかった。

飯島めいの足跡調査は本件の主要捜査ではなく、脇を固めるため隠密に進めるいわば補足的な捜査であるという性格上、飯島家への聴取を躊躇していた。

しかし、これまでの現地の聞き込みで飯島めいの生い立ちには喉に小骨が刺さったような違和感が残っている田所は、草薙の許可もあり三度目の出張捜査でいよいよ飯島めいの家族への聴取に踏み切った。

田所は、飯島めいの父親が社長を務める飯島工務店の本社をあえてアポなしで突然訪問した。

飯島工務店本社は、東海道本線と名鉄三河線が乗り入れる刈谷駅の北口繁華街にあった。社屋は壁面がコンクリートの打ちっぱなしになった斬新なデザインで、最近建て直されたらしく真新しい六階建てのビルだった。

受付で社長との面談を申し入れ、受付嬢を通じて何度か用件のやりとりをした後、ようやく五階の応接室に通された。

「突然にお伺いして申し訳ありません。警視庁西城署の田所です」