「いや。実は、田代さんの足取りを確認させていただいたところ、おっしゃる通りでしたので、そのことをお伝えに上がりました」
「こそこそと調べたんですね。やっぱり疑っていたわけですよね」
「いや、いや。この間も言いましたように、多少とも関係のある方は全員をきちんと調べないといけませんので。不愉快な思いをさせたかもしれませんがご勘弁下さい」
「的外れもいいとこですよ。じゃ、もう無関係ということですよね。仕事もありますんで、これで」
疑われていたことを腹立たしく思う気持ちはよく理解出来た。しかし、宇佐見には、田代が必要以上に自分たちを敬遠しているように思えてならなかった。
「あっ、田代さん。少しよろしいですか?」
宇佐見は、きびすを返そうとする田代を引き止めた。
「疑いは晴れたんでしょう。お客様もいらっしゃるし、もう勘弁して下さいよ。これじゃ、営業妨害ですよ」
確かに、先ほど田代が相手をしていた婦人やほかの数名の客が、見ない振りをしながらこちらに注意を向けているのが見て取れた。
「時間は取らせません。一つだけ確認したいことがありまして」
店頭でのゴタゴタを避けたい田代は、スタッフの休憩室兼会議室となっている店の奥の小部屋に二人を案内したが、不機嫌さを隠そうともしなかった。