【前回の記事を読む】鈴を持ったおばあさんの姿が見えてしまい、身体が硬直した。この近所では、子供を探す鈴のおばあさんの幽霊の話が…

第二章

一人遊びが好きな少女

たかちゃんは、一人になると、時折現れる幻想の世界を空や森に描き戯れる事で、日々大抵に起こる嫌な事柄は忘れられた。そんな中で、望んではいないのだが、この世の者ではない、幽霊や奇妙な者を見て仕舞う事も多かった。

それは何か悪い事の前兆だろうか?

それとも、別の事だろうか?

大勢の子供たちが遊ぶ広い敷地で、たかちゃんは、真っ赤な着物を着たお河童頭の女の子を見た。それは座敷童らしいのだが、敷地の庭で子供たちと混ざって遊ぶ事も有るのか? 

たかちゃんが、遊んでいる子供たちに、赤い着物を着た女の子を見たかと聞いても、見てないと言う。たかちゃんにしか見えない座敷童に、たかちゃんが少し怖くなった出来事だった。

そんな、たかちゃんの父親は、強く優しい人で、若い時は片目の兵隊さんだった。たかちゃんは、父親を尊敬して誇りに思う。それは父親が戦争で、人を一人も殺していないからだ。

たかちゃんのお母さんは、東北の会津藩の士族の娘で、薙刀が得意で、女学校で水泳も得意だった。川崎市の六郷橋付近、多摩川沿いの東京市の主催の水泳大会で、一般代表選手として、国体の水泳選手との水泳競技が行われた。

たかちゃんの母親は、女学校から呼び出されて、その水泳大会に出場したが、名のある水泳選手に敗退した。それは、国際大会に出場する選手相手に競技をする事で、選手に自信を付けさせる、言わば当て馬的な大会だった。しかし、そこで母親は、後に、たかちゃんの父親となる、三郎と再会した。

最初のはっきりとした出会いは、母親が六才ぐらいの時に、人さらいから逃れて、片目を潰して包帯をしていた三郎に助けられ、二人で仁王門に隠れた時で、その出来事以来の事だった。たかちゃんが、父親と母親に馴れ初めを聞くと、母親が怒り心頭で言うのだ。