「突然の雨の日にはお客さんは傘を持っていませんから、帰宅する人はこまりますから。特に最近はゲリラ豪雨がおおいですから、タクシーを使おうとするお客さんを見かけますよ」

英良は時々バックミラーを見ながら喋った。女性客は突然饒舌に英良に何かを説くように語り掛けた。

「人は自分で考えを決めてそれを実行します。間違ったと思ったら、またやり直すものです。完璧な事は何もないものですよ。

人間は誰でも間違うものですからね。それを責めたりしてもいけません。責める人は何も分かってはいない。人の失敗を責めることは誰にでもできる。誰にでもあることと誰にでもできること。全ては繋がっています。闇雲に人の失敗を責める人は未熟です。何故かと言うと誰にでも間違いはあって、自らも間違いをおかしている。間違いを正すという大義名分で人を責めているからです。

貴方は人の悪口を言わない方のようですね? お若い方なのに感心しました。でも気を付けてください。貴方のその性格は両方の側面を持っています。それは好かれるが故、全てを受け入れること、貴方の優しさは自分をダメにする両刃の剣。優しいだけでは損をしますよ」

年配の女性客が言うと、目的地の病院へ着いた。英良は見慣れた正面入り口へ車を着けた。

「年寄りの話に付き合ってくれて。どうもありがとう」

そう言うとその年配の女性客は料金を支払い降車した。最後に『頑張ってください』などの陳腐な励ましの言葉を英良には一切掛けずに病院の正面入り口へ入って行った。英良はそんな心遣いを嬉しく思った。

 

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