【前回記事を読む】「僕はもう長くはここに居られない」揺れる影。帰る時間が迫っている中、かけるが伝えたかった思いとは…

序章 新たな預言

英良の章(一)  振出し

帰宅後英良はいつものようにビールを一本飲んだ後、睡魔に襲われソファーにもたれてうたた寝をした。夢うつつの中で毘沙門天は言った。

「闇の世界での不穏な動きや幼子を引き込もうとする力は、何やらどこか深いところで繋がっているように思われます。英良様の身の回りで起きる偶然に重なる事象も元を辿れば一つ。悪意は複数あっても根源は同じで御座います。

地獄の六の悪意も大きな力が英良様へ放ったこと。それと並行して幼子が何かの力により変貌したということに間違いありませぬ。人界を離れた幼子に英良様は会われましたな?」

毘沙門天は言った。会った、と英良は応える。

「人界に魂を残している間、幼子は英良様のことを覚えているでしょう。しかし、人間は輪廻転生を繰り返すもの。一度、黄泉の国へ入ると幼子の魂は英良様の記憶を失い、別の人間へと魂が移り別人へと成り代わるので御座います。

それはもはや、かつての幼子では御座いませぬ。もし、今幼子が悪意に取り込まれ英良様に近づいてきたら、大きな禍根を残す敵意になることは必至。現にその兆しが現れ始めているので御座います。気が付かれましたか?」

知らない、と英良は答えた。少し前、(亡くなって、かけるからの(いざな)いで)かけるに会ったが、特段変わったことは感じなかった、と答える。

「左様で御座いましたか。分かりました。現状を鑑みますと幼子は悪意の中にいると申し上げてよいでしょう英良様。我が集めた神々からの情報によると幼子は既にかなり強大な力を持っているようで御座います。