【前回記事を読む】「OB・OGたちからのおごりあり!」そうチラシに記された天国のような部活。音楽に捧げてきた少年を虜にしたのは―。

〈序章 202×年3月某日(土曜)昼過ぎ〉

〈高校1年生〉

大会後、歴代の大学生OB・OGがずらり勢揃いした寿司屋2階座敷貸し切りでの打ち上げでは、先輩たちもその応援を絶賛してくれ、次々とビールを注いでもらい、声枯れした喉のアルコール消毒だとか言って盛り上がる一方で、来年こそは選手として褒められたいとの思いを改めて胸に秘めつつ3人はそれぞれ帰宅したが、親に全員「飲み過ぎ!」と怒られた。

2学期以降は、へとへとの夏練習で帰宅し何もできなかった勉強不足が祟ってか、はたまた深夜放送の聞き過ぎか、あるいは難関校にありがちな、平均点がとても低い難問試験だったせいか、赤点を取った者(本人の名誉のために、名前は伏せる)もいたが、追試でしのいだり、時には有り難いことに下駄をはかせてもらったりして、何とか3人とも2年生に進級した。

〈高校2年生〉

進学校らしく、3年生は受験勉強のため実質引退するのを受けて、深田がキャプテンに、白川が副キャプテンに任命された。

西尾は「深田と白川の2人についていけば、間違いはない」と、笑いながらではあったが、事あるたびに言うようになっていて、それを身をもって示そうと、会計(イベント担当兼務)に立候補したが、誰も反対しなかった。

シーズン序盤の学区内の都立親善対抗となる三校戦が開催された。年度の出だしの近隣各校の実力を互いに確認しあう、各個人種目に加えてリレー競技も行う大事な一戦だった。