【前回記事を読む】「今のこのままの水泳部でいいの?」店内の喧騒にまぎれて、思いっきり叫んだ。うちは弱い。 “進学校にしては善戦してる” って…
〈序章 202×年3月某日(土曜)昼過ぎ〉
〈高校2年生〉
{吉祥寺の夜(白川朗子)}
それにしても、あの男子メドレーリレーは情けなかった。
バック→ブレスト→バタフライ→フリーの順なのに、バックの第1泳者たちが団子状態で戻ってきて、うちはバタフライの西尾君が第2泳者で飛び込んで、プールに波しぶきを立てだしたら、他のコースは、どこも波を立てずにブレスト。
その間違いがはっきりした後の第3泳者として、深田君が波を立てずにブレストで泳ぎ切ったけど、なんと、泳者の順番間違い。
各校の応援が一瞬シーンとなった。あー情けない。他校に文句を言われたなら、まだ我慢できるけど、1年生から、「隣のコースを応援してた人たちが結構喜んでました」って言われる始末。
西尾君は、「めんごめんご。弘法も筆の誤り。折り返しのターンをして、あれっ? って気づいた。それにしても四面楚歌だった。しばらく、臥薪嘗胆」と言ってレース後に照れ笑いをし、
深田君は、「責任取ってスポーツ刈りにする」とキャプテンらしく言ったけど、こんなことじゃ、取り組み姿勢を問われても文句が言えない。
この現状を打破していかないと、今年はダメ。公園での反省会でみんなも賛成してくれたけど、「今のこのままではいけない」と気持ちを一つにして、全員で何かしないと……。
そんな考え事をしていたら、大合唱が終わっていた。店内が興奮冷めやらずで、みんな満足そうにしている。その空気そのままに、未だ興奮冷めやらない2人に向かって、話しかけた。
「部活、今年は少しでも上を目指そうね!」
2人は口を揃え、「Help!」と言った。