[蛇足ながら、後年、この3人は大人の仲間入りとして遇してくれた、当時のこうした高校生活を懐かしむようになる。
彼らの両親世代は、例えば旧制高校出身であったり、年若くから社会に出て稼ぎだす者も多かったりと、若い頃の自分たち同様にと高校生を大人扱いしてくれ、例えば、飲酒に関しても寛容だった。
また、世間も学生運動がいわゆる転機を迎えた後とはいえ、その名残りは続いていて、高校生を大人の仲間として扱ってくれた。
建前的には、もちろん未成年飲酒は駄目とされ、修学旅行などで発覚すると停学処分などは食らったが、それぞれの自己責任の範囲内で世間に迷惑を掛けないならば、自主性が尊重されて黙認されていた感が強い時代であった。
さて、話を3人の高校時代に戻そう]
部としてのイベント(三校戦)が無事終わり、校内のイベント(放課後に行われる組別対抗クラスマッチ)が始まった。
・白川が、背が高いというだけの理由でバスケとバレーにエントリーされたが、基礎体力がついてきたおかげで意外にも活躍できたり、
・深田が、「我こそ皇帝ベッケンバウアーなり」と言って、手製のキャプテンマークを巻いて(同じ格好の者がチームに複数いて、皆ゴール前に陣取るので紛らわしかった)、サッカーの試合に出たり、
・西尾が、校外周回の駅伝に、出走予定者の急な体調不良によるエントリー変更で白羽の矢を立てられ…部室でチェリオをみんなで飲んで、舌を出し合ってた際に告げられた…、困ったときの神頼みとばかりに、キャラメルを舐めて「一粒300m」と走ったり、
やがてそれらも終わって、いつもの日常が戻ってきた。
校内で変わったことといえば、毎年恒例だが、クラスマッチでの活躍や応援が縁で何組かの新しいカップルが誕生したことくらいで、そうした良縁に今回も恵まれなかった深田と西尾が部室でダベっていたら、同じく恵まれなかった白川が入ってきた。
(ちなみに、西尾は、クラスの女子とほんのりいい感じになった気がしてモーションを掛けたが撃沈した。白川は、クラスの男子からモーションを掛けられそうになって逃げた。深田は、堅物だった)