二、 謁見、手白香姫舞う

――しまった、彼ら勾玉王子、槽隈王子たちが先に手白香姫を手に入れてしまうではないか――

金村が心配するのも無理はない。息長氏と馬車に乗り合わせ、豊原から崩れ川(九頭竜川)の山麓を見学の帰り、馬で走らせてきた二人の王子たちが代わるがわる姫の馬車に近寄っては何か話しかけてくる。

勿論、男装の姫は男として二人に接しているのだろうが、王子たちは知らぬふりして付き合っているのだと、金村の目に映ってしまう。

――危うい、やはり、早々に越王への謁見をお願いしなければ。姫の立場も、危険にさらされるではないか――

「大連の連れてきた男子(おのこ)は、器量がいいのか誰にでも好かれるみたいですぞ」

見透かしたような息長氏の言葉が突き刺さってきた。――やはり正直に話さないと、見知らぬ国においては、特に女の身はうやむやにされてしまい、取り返しのつかない事態になってからでは遅い――

「越大王オホト様への謁見を頼みまする」意を決して金村、言い寄った。

「何用かな」

うううううっ、詰まりながらも、

「そのことで、折り入ってそなたに相談がしたいことがある」

「大和王の存続に関わる、重大事よ、頼む」

手白香姫を視野に入れ、金村は深々と頭を下げた。

 

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