気ままな自由散策

警察官の話から、ピッポが一人で歩き回った様子が推測できた。 まずピッポは北へ向かった。南北に走る国道は車線の幅広い道。我が家はその西側に位置している。

どこをどう歩いたかはわからないが、大型トラックの往来の激しいどこかの地点で、ピッポは東側へと横断し、そのまま北東へ向かう。

行き着いた先にはスーパーマーケットがあった。そこの駐車場をうろうろしているところを、犬好きな女性に捕まった。

犬好きな人は迷い犬を見たら放ってはおけない。車に轢かれたらかわいそう。飼い主が心配しているだろう。見たところ飼い犬だから、本人も迷って困っているだろう。

さまざまな考えから、放れて歩いている犬は犬好きに捕まえられるケースが多い、とあとでわかった。その女性、仮にMさんとしておこう。

Mさんは買い物を済ませて家に帰るところだった。ピッポに声をかけると寄ってきた。自分の家にも犬がいるので、犬の習性はよくわかっている。

それなら、とりあえず家に連れて行こう、と自転車の荷台の紐をほどいてピッポの首に巻き付けた。そして歩いて十分ほどの家までピッポを連れ帰った。

自宅には犬のドライフードがあるので、まずピッポを家の入口の木に紐で繋ぎ、ボウルに水をくんで持ってきた。ピッポは水をがぶがぶ一気に飲み干した。

続いてフードを持ってきてやると、目の色を変えてがつがつ食べた。よほど空腹だったに違いない。Mさんは家の中でバセット・ハウンドを飼っていた。

冬の寒さが半端ではないので、その年老いた犬は暖かな家の中で暮らしていた。万一飼い主が見つからなかったら、ビーグル犬は家の外で飼ってやってもいいか、とまで思った。が、問題が一つ。