「えー、そうなんだ、ソフィアのミドルネームはもしかして?」

「そうです。わたしのこどもたちもこのミドルネームを使っています」

「そうなの? どうして?」

「日本への恩を忘れないためですよ」

「このニミッツというアメリカ司令官は、東郷平八郎という日本の連合艦隊の司令官を尊敬していました」

「東郷平八郎?」

「そう、日本がロシアと戦ったとき、1905 年5月27日、日本海海戦で日本の連合艦隊がロシア艦隊に完勝したときの日本の艦隊を率いた名将です。あなたの両親の結婚記念日は5月27日でしょ」

「あー、確かに」

「若き日のニミッツ海軍少尉は日本に寄港したときに東郷平八郎に会い、大変感動したことを語っています。あのとき日本が立ち上がらなければ、世界のアジア・アフリカはいまだに白人の植民地だったのですよ」

「そうだったの?」

「日本は有色人種、ずっと虐げられてきた黒人、黄色人たちの希望の光だったの。2015年に天皇皇后両陛下が英霊の慰霊に来られました。そこのペリリュー島南部にある〝西太平洋戦没者の碑〟には、目のモチーフがかたどられています。その方角に何があるのかご存じですか?」

「ううん」

「そうですか……まあ、今日はこれくらいで、ホテルへ帰って一緒にご飯を食べましょう。一人ゲストも呼んでいますから」

パラオには酋長の制度が残っていて、酋長者会議という集まりもあり、この地の伝統や文化を護り、また政府にも提言するシステムが残っているのだそうだ。

ソフィアと共に座って、何を注文するか話しているところに現れたのは、その酋長の一人だった。

「こんばんは、亜美さん」